結局今日は日野雄大の手料理をご馳走になっただけだった。
あのあと最寄りの駅まで送ってもらって、別れ際「キスしよう」とほざいた日野雄大の頭をグーで殴って私は今電車に揺られていた。
私の家の最寄り駅と日野雄大の家の最寄り駅はたったの三駅差だから寝てしまったら駄目。なんだけど……眠い。
重たくなっていく瞼に気付いて、背筋を伸ばした。
眠気覚ましに私は日野雄大の家庭のことに考えを巡らす。
日野雄大は私と一緒で母子家庭だ。
一度お父さんのことを尋ねたことがあるけど、日野雄大は「分からない」と答えた。
『死んでるってことは知ってるけど、いつどうして死んだのかは教えてもらってない』
とも、
『小さい頃に理由聞いたことはあるけど教えてくれなかったし、言いたくないんだなと思って聞かないことにしてる』
とも言っていた。
人の家の事情とは本当にそれぞれで、私の家だってそうだ。
だけどやっぱり日野雄大の家は少しおかしいと思う。
……日野雄大のお母さんって、一体どんな人なんだろう。
「……あ」
いつの間にか眠気はすっかり覚めたものの、私は深く考え込みすぎたらしい。
……結局降り損ねた。

