過去へ舞う姫

幸奈「あ〜それはここ」


総司「呉服屋?」


幸奈「そう呉服屋」


総司「何か新しい着物でも買うの?」


幸奈「いや布と糸が欲しいなと」


総司「なんで?」


幸奈「まぁそれはのちのちわかるから」


総司「ふ~ん、お金は?」


幸奈「お給金貰ったから大丈夫」




大量の布と糸を購入

切れ端の布も大量に譲ってもらった




もう空は紅く染まっていた






幸奈「はやく帰らなきゃ」


総司「そうだね、遅くなったら土方さんに怒られる」




2人で静かに歩く





総司「翔、君が隊士になる以上知っておいて欲しいことがある」


幸奈「うん?」


総司「刀っていうものはただの飾りなんかじゃないし、そう簡単に振り回していいものじゃない」


幸奈「うん」


総司「刀は、最初はただの鉄にすぎない……でもね、人を斬った瞬間その鉄は血を吸い刀となる……この意味分かる?」


幸奈「...わからない」


総司「刀は斬って本物になるんだ、人を殺めて初めて刀と言えるんだ、人を斬れないなら持つ意味は何も無い」


幸奈「うん」


総司「翔は斬れる?」


幸奈「……私は、戦のない平和な世を過ごしてきたの、私に人を斬れるかはわからない……

ましてや人を斬る覚悟なんてこれっぽっちもない」


総司「……」


幸奈「だけど……



守りたいものが出来たの…………
死なせたくない人達が出来たの…………


だから...私は……

その人達を生かす為にここにいる……



私の刀は皆を生かすための刀、人を殺めるための刀じゃない


私の力は皆のために使う、そう決めたの」



総司「そう...でもいつかは斬らなきゃならない……

重いよ...君には…………」


幸奈「分かってる、全部背負う」


総司「僕達が死者に対してのせめてもの償いは重みを背負いその人達の分まで生きること」


幸奈「うん……」