「棗…」

彼女は嬉しそうに微笑みながら俺の名を呼んだ。

「棗、これからずっと一緒。
…貴方が私の名前を泣きながら何度も呼ぶまで、ね。」

「何言ってんだ‥?俺は…確かに君に会いたいと思った。でも、ずっと一緒に居たい訳じゃない。」

彼女は一瞬驚いたような顔をした。
何に対しての驚きなのかよくわからない。

「嘘だよ…。
なんで?…棗は私に会ってどうするつもりで私を探したの?一緒に居たいからでしょ?
棗は、心の何処かで私を求めてるはずだよ。」

「…………」

確かに…どうするつもりだったのだろう。
会って話がしたかった?
会って存在を確かめたかった?
…いや……会って‥一緒に居たかった。
夢の中で繋いだ手があまりにも小さくて細くて、守ってやりたいと思った。

彼女は、夢の中の俺にとって掛け替えのない存在で、今の俺にとっても掛け替えのない存在のはずだ。