普通では有り得ないような整いすぎた顔。
日光に当たった事がなさそうな透き通るほど白い肌。
もしこれが物語の中の話なら何のためらいもなく"彼女は人外だ"と受け入れるだろう。
…彼女の言う事は本当なのだろうか。

「人間じゃなければ…君は何?」

狐や狸が化けているのか、幽霊が見えているのか‥それくらいしか見当がつかない。
彼女が口を開くまでの沈黙が酷く永く感じた。

「私は……私は薄花桜。」

「……?」

「今話せるのはこれだけ。」

彼女があまりにも悲しげに笑うから、俺は何も言えなくなった。

沈黙が続く。
痛いくらいの沈黙。

「ねぇ…」

その沈黙を破ったのは彼女だった。

「……何?」

「あなたの名前は‥?」

「俺?‥俺は常盤 棗。」