ある日、俺は夢を見た。

いつも見る景色の中に微かな違和感を感じた。

いつもの町並み、いつものマリさん(近所に住み着いた野良猫だ)、いつもの…

─…いや、違う。これは…

毎日日課のように見る絵に、ある日誰かが悪戯して真ん中に大きな黒い点を描き込んだような感じ。
とてつもない違和感を感じた。

「……誰…?」

夢の中で俺の手を握り共に歩く女の子に問い掛ける。
顔は見えない。服は…春らしい明るい色のワンピース。
真っ白な肌の女の子。
その子は俺に言った。

「誰でもいいの。…また‥…から。」

「…え?今何て…」

強風のせいで何と言ったか聞こえない。
聞き返したがもう返事はなかった。
俺は目を覚ましてしまったから。

「あれ、誰だよ…」


何故だか俺は夢で見たあの場所に行きたくなった。
あの場所はそう遠くない。
小学生の時通っていた通学路だから。

「チャリで行ってすぐ帰るか…」

俺は着替えながら、久しぶりにドキドキしていた。
"何日ぶりの外だろう"とドキドキしていたのではない。
"あの子に会えるかもしれない"とほぼ100%有り得ない想像に胸を高鳴らせていたのだ。