私には気になることがたくさんある。

まず、一番最初に気になることは
お母さんが私より桃を大切にしていることだ。

桃と言っても果物のほうではなく
(うちの家は別に農家ではない)
半年前に、お母さんが再婚した亮平さんの一人娘のことだ。
私の4つ下の小学六年生。
「あんたより 桃のほうが好き。」
とかはっきり言われたことはないけど
半年も桃と生活してれば、些細なことで
私より桃の方が大切なんだと感じる。
例えば、お母さんがご飯をテーブルに下げるときに
わたしより先に桃のお皿を並べる。
大皿のおかずを個々のお皿に盛り付けるときも
お母さんは絶対桃の分から盛る。
おいしい?と感想を聞くときも
絶対桃から聞く。

細かすぎると思うかもしれない。
私もそう思う。
私は別にお母さんから、ほっとかれていたり
差別的な態度を取られているわけでもないのに。
私はいつからこんな些細なことまでも
気にするようになったのだろう。

最近、お母さんを赤の他人のように感じる瞬間が増えてきた。
お母さんを赤の他人と感じてしまったら
桃も亮平さんなんかもっと赤の他人だ。
一年前までは、お父さんとお母さんと仲良く3人で暮らしていたのに。
贅沢はできなかったけど、月に一回はお気に入りのインドカレー屋さんで夕ご飯を食べに行ったり
休みの日には、3人でスーパーへ買い物へ行ったり、同じ番組をみて笑っていたのに…。

再婚したお母さんはとても楽しそうだ。
お父さんにはしてなかったネクタイを結んであげることを亮平さんに毎朝やっている。
離婚する前は別に気にしてなかったけど
どうしてお父さんにはやってあげなかったのかな。
「お父さんはね、お母さんに10回も告白してきたのよ。」って私に何回も嬉しそうに話してたじゃん。

お母さんの新しい人生を祝ってあげるべきなのかな。

まだ亮平さんを「お父さん」と呼べない私が子どもなのかな。

そんなことを考えるとのどが締め付けられる。

こんな感情はなんていうんだろう。