田舎にやってきた。
季節は夏。体がどろどろに溶けてしまいそうな暑さに誰もが顔をしかめている。
1週間前、ちょうど夏休みが始まった頃、おじいちゃんから電話があった。
『おお、香理か?久しぶりだね、元気してたか?』
相変わらずでかい声だ。畑で汗水流しながら仕事をするおじいちゃんが目に浮かぶ。
「うん、元気だよ。おじいちゃんは?夏バテとかしてない?」
『ああよ、元気だ。香理の声聞いたら尚元気だ!』
「そっか、よかった。それで、今日はどうしたの?」
『ああそうだ、琳子さんいるか?』
琳子とは私の母の名前だ。
「あ、ううん。今はいない」
『そうか…』
「どうかしたの?」
『あー…また掛けなおすな』
「うん、わかった。じゃあね」
『体調に気をつけてな』
「うん」
おじいちゃんが何に母に何を伝えようとしてたかは大体わかっていた。