「三日月さんって悠人のこと気になってるらしいよ!!悠人はどうなの!?」

始まりはこんなものだった。
中学2年の時に流れたこの噂はたちまち俺、神崎悠人の耳に入った。

「なんでそんなことが分かるんだよ。本人にでも聞いたのかよ」

「うんうん、だってねこの前の林間学校の夜にみんなで恋バナしたら三日月さん、悠人が一番気になるって言ってたんだって」

「え、まじで?」

三日月彩香。同じクラスの女子だ。
三日月は性格にやや難があるものの、根は良い奴で容姿も悪くない。
おまけにスポーツもできるし成績も学年でトップを争うほどだ。
そんな女子が、恋愛とは縁がないと思っていた自分のことを好きだなんで聞いたら、たまったものではない。

「悠人はどうなの?」

「え〜悪くないと思うけど、うーん、、、
なんで俺なんだろうな〜って感じかなぁ。」

「ふーん、素直に喜べばいいのに、」

もっともな意見だった。
この時俺はかなり高揚していた。

そしてこのことをきっかけに、たかが三日月が自分のことを好きかもしれないと言うだけで、俺は三日月のことを意識してしまった。