風が吹き、ざあっと音を立てて桜の木を揺らす。


そして青空の下に広がった景色にピンク色の粒を吹き上がらせた。




重かった服もいくらか軽くなって、桜が咲く季節になった



季節が移り変わっても、

俺はいつものように同じ制服を着て、

面倒くさいと思いながらも学校に向かう。





高校2年の春。


いつもと同じように、適当に過ごす。


いつもと変わったことなんてない


なにひとつ。




「おはよー、遥斗!」


「はよ」


うしろから俺を呼ぶ元気な声がする。

振り返ると見慣れた顔がそこにあった。



柊恵。

ケイと読むところを、初めて見た時メグムだと勘違いしたときから、俺はずっとメグと呼んでいる。


そんなガキの頃からの友達が俺の顔をまじまじと見て近づいてくる



「なになに、元気ないじゃん?」


呆れたように言い返す。


「いや、朝っぱらから元気なメグがおかしいんだろ?」

「そんなことない!」


メグは…いわゆるカワイイ系の男だといえる。
…というか、男っぽくない…?

顔も可愛いメグがモテるのは当然で。



でもこいつには…



「恵!おはよ!」

「あ、咲おはよう!」


メグと同じように元気に俺らの所に来たのはメグの彼女。


ボブヘアの似合う彼女は、校内でも可愛い方だと思う。



「遥斗くんも、おはよう」



にこっと微笑んで俺を見上げていう咲ちゃん。

「おはよう」


この子は顔だけじゃなくて性格もいいんだと、接するだけで伝わってくる。


まあ、そうじゃなきゃ俺が2人を取り持ったりするわけがない。



2人が付き合いだしてから3人で学校に向かうのは日常的なことになった。




…そんな俺はというと…





キャーーーーー!!!




「毎朝頑張るねえ、みんな」

と、感心したように言う咲ちゃん。


ほんとにね。


「おまえ、アホみたいにモテるなあ」

呆れたように言うメグ。

…おまえ、アホみたいって…



「いや、お前もモテるからな?」

メグに釘を打つ俺の声がかき消される勢いで
耳に飛び込んでくる

声、

声、

声…



「おはよー遥斗♡」

「遥斗〜!!!」

「遥斗〜、ねえ今日遊ぼうよ〜」

「お菓子作ってきたから一緒に食べよ〜」



いつの間にかメグと咲ちゃんの2人の姿が見当たらない。


俺の周りは女の子に前後左右囲まれていた。

「みんなおはよう」

自分でも呆れながら、
女の子たちに笑顔でかえす。


その瞬間またもや悲鳴。



「今日もモテモテだねえ、遥斗くんは」


どこに行ったかと思った咲ちゃんが


離れた所で言った。

「だなー」

その隣にはもちろんメグも。

いや、お前もモテるって言ってんだろ…

適当に答えていたメグを睨む。



そして俺は女の子に流されるように教室に向かった。