「もう1人の人ってどんな人…」
『やっべー!遅れましたー!!』
ドタドタと騒がしく入ってきた男の子。
髪は栗色に染められていて、自然な感じにスタイリングされている。
人懐っこそうな大きな目と、走ってきたからかほんのりと赤く上気している頬。
『お前は2時までには来いって言っただろうが
』
『すいませーん』
寮長に怒られて、少しバツが悪そうに笑った彼。
あれ?なんか既視感。
どこかであったことでもあるのかな。
『こいつがもう1人の寮生だ』
「あ、どうも。渡利です」
ペコっと形だけのあいさつをして、頭の中で別のことを考える。
んー。思い出せないな。
でもどこかで見たことがあるあの笑顔。
『……柚子』
「え?」
『柚子だろ?俺、日野一樹。覚えてない?』
一樹って……。
「あの一樹?!」
『中1の時に引っ越したあの一樹だよ』
見たことあるなんてもんじゃなかったよ。
毎日見つめていたんだから。
日野一樹は私の初恋の相手だ。
『なんだお前ら。知り合いか?』
『昔の同級生っすよ』
『まあ部屋も隣だし仲がいいなら都合もいいな。じゃあ部屋に案内する』
そのまま歩き出した寮長。
ついて来いの無言の合図なんでしょうか。
一樹が寮長に続くのを少し距離を開けて追う。
(こんなところでまた会うなんて)
思ってもみなかった。
一樹は引っ越す前に私に、その……告白をしたわけだけど。
きっと今はなんとも思ってないよね。
あんだけカッコよくなってたら転校先で彼女ぐらいいただろうし。
蘇りかけた過去の恋に蓋をして、一樹の後ろ姿を見つめた。
