誰かを憎むつもりも恨むつもりもない。
これは、自分の罪を忘れて一人幸せになろうとした私への罰。


「罰を受けるのは私だけでいいんだから…」


小さく呟く声は暗闇に消えた。
この声みたいに私も消えてなくなってしまえばいい。

消えてなくなってしまえばもしかしたら光が見えるかもしれない。
夢の中では拓海さんも私を愛してくれるかもしれない。

淡い期待だって、少しくらいは持っても良いでしょう?



色がない世界、落とした視線の片隅に映った靴。それは恋焦がれる人がいつも履いている靴と同じ。

期待なんかしちゃだめだよ、奏多。
同じ靴なんて五万とあるんだから。

アノヒトが此処にくるはずないんだから。


それでもほんの少しの期待が生まれてしまうのは私がどこまでも罪深い馬鹿な女だから。


「奏多…」


ほら、期待なんかするから幻想まで生み出すんだよ。


「っ奏多!」


それでも、もしかしたら…なんて考える浅はかな自分。
二の腕に感じたい鈍い痛みに眉を寄せてほんの少し上げた視線の先にはモノクロの中に佇む愛しい人。


「よかった…奏多が無事で…よかった。」


声を聞いただけで、姿を見ただけで急速に色付く世界。
見上げた貴方はさっきまでの冷たいダークブラウンではない。いつも見せてくれていた優しいダークブラウン。


「な…で、なんで…」

「約束しただろう?俺は、君の傍にいるって。何があったって君の傍を離れないって。」


硬く閉めて一滴の水すら出なかった蛇口が壊れたように水を吐き出す。

あぁ、貴方がいるだけで私は弱くなってしまうんだ。


「聞いたよ、全部。」

「ぜ、んぶ?」

「あぁ、全部。本当の事」


声が掠れる。ただ貴方がいるだけなのに、声を出す事すら億劫になってしまうの。