拓海さんのご両親に会ってから一ヶ月、特に何もなく過ごしてきた。
英部長の事も何もなく、本当に怖い位に何もない。

変わったのはあの日から毎日のように拓海さんと会っていると言う事。


ただ、会って食事をしたりショッピングをしたり、時には拓海さんのマンションにお泊りをして身体を重ねたり。
誰が見てもきっと順風満帆な日々だったんじゃないかって思う。



「…で、上手くやってるんだ」

「ん。」


平日のお休みなんて有給休暇を取らなければありえない。
私は今日、高校の同窓会に行くのに溜まりに溜まった有給休暇を一日だけ消化した。
休まなくても同窓会自体は夜だけど、昼間のうちに目の前にいる妃毬に会いたかった。


「あのさ、あの時の事は奏多のせいじゃないんだし…もう気にするのやめなよ。」


妃毬は私の罪を知る数少ない一人。その中でもたった一人、妃毬だけは最後まで私の味方でいてくれた親友。


「あれは美樹が悪いんだし。美樹には悪いけどああなってなかったらズルズルやってただけでしょ?」

「そう…かもしれないけど、…でも美樹ちゃんだって真剣に先生と付き合ってたのかもしれない」

「あのね、考えすぎるのはアンタの悪い癖。だいたい、不倫なんてしてた美樹が悪いんだから。」


昼下がりのカフェでするような話ではないのかもしれない。ただ周りに人がいないからできるのかもしれないけれど。

妃毬はなんでもはっきりと言うタイプで裏表が一体のような性格だからきついと思われる傾向にあったりもする。

そんな妃毬から出た"不倫"と言う言葉にキシリと胸が痛む。
不倫は確かに悪い事なのかもしれないけれど、今の私にはそれを声に出す勇気はない。