部長が部屋から出ていって、荷物を持ったまま黙った私に拓海さんは小さくため息を吐き出した。


「奏多、伊織とメグは」

「うん……不倫、だよね。でも英部長もそのメグさんもすごく本気、違う?」


昔から、どこか抜けているのに勘だけは本当に良いと周りに言われていた。
まさかこんな場面でそれが発揮されるなんて思わなかったけど。


「……あぁ…」

「あ、今ちょっと私を馬鹿にした?」


暗くなるのが嫌でわざと明るく、膨れて見せたら酷く驚いたように目を丸くする拓海さん。


「いや…奏多は思っていたより鋭いな。」

「ふふっ…昔からね、それだけが取り柄だったの。」


私がそう言えば、私の髪を撫でながら苦笑する拓海さん。
そう、それだけが取り柄だったから今拓海さんが言いたい事もなんとなくはわかるよ。


「大丈夫!誰にも言わない。部長とメグさん?の問題だもん。」

「……そうだな。」

「でも…なんだか悲しい。両思いなのに、ね…」


両思いだからって必ずしも結ばれるわけじゃないのはわかってはいるの。
昔、傷付けてしまったあの子の事でイタイくらいにわかってる。

まだ子供だった私はあの時、何も考えずに傷付けたあの子。

だからかな、
英部長を応援したい。

でも…
円香さんが悲しむのも見たくなんかないの。


願わくば…誰も悲しむ事がないような未来を。