背の高い拓海さんが腰を屈め、私の頬に口づける。


「た…拓海さんっ」

「イケナイ事、する?」


耳元で囁く声に体中の血液が沸騰したみたいに身体が熱くなる。

イケナイ事、

ただその言葉で、私の身体は私の身体じゃなくなったように拓海さんに従順になるみたい。


「イケナイ…事…?」

「そう、こんな事とか…」


優しく微笑む拓海さんじゃなくて、男らしい艶のある笑みを浮かべる拓海さん。
クチビルに不意に感じた暖かさに反射的に瞼を下げた。


「愛してるよ、奏多。」

「た……ん…っ」


甘い甘い、媚薬みたいなキス。
ただクチビルを付けただけのキスなのに足に力が入らなくて…
膝からカクリと力が抜けて腰に回された逞しい腕だけが命綱。

好きだと、この人が大好きだと、そう思った。
恋愛経験皆無だから思い込んでるなんて思わない。

私は、絶対にこの人…拓海さんが大好きなんだ。


「愛してるよ…」

「わ…たしも、好き…」


私がただ、好き、って言うだけで優しく微笑んでくれる。
あぁ、好きだな。ってもっともっと思わせてくれる。

愛を囁けばまた併されるクチビル。軽く撫でるように口づけを、息苦しいと、薄くクチビルを開けばスルリと入り込む熱いもの。

クラクラするのは酸欠なんかじゃない。


貴方のすべてに眩暈がしてしまうんだ。


湿った音が静かな社長室に響き、余計に眩暈がする。

高ぶる感情と高ぶる熱。
どこまでも堕ちる感覚、それでも嫌な気分なんか微塵もない。


ふわふわとした気持ちが幸せな気持ちなのかな、なんて考えながら拓海さんにもたれるように身体を預けていた。