「ご迷惑を掛けて本当に申し訳ありません…私、帰ります!」


何を言えば良いかわからず、無意味に近い端正な顔にドクリと心音が跳ね上がる。ごまかすように言った言葉は声が裏返り、余計に恥ずかしい…


「その前にコーヒーでもどう?君とゆっくり話もしたいしね。」

「いや………あ………はい…」


自分のお馬鹿…。断る理由が見つからずに小さく頷いた私。
社長は小さく笑い、私に手を伸ばす。
これは、掴まれと?いやいや、無理だから。社長に触るなんておこがましい!

私は断ろうと社長を見たが、無言で私に手を伸ばす社長に結局何も言えずに申し訳なさといたたまれなさを感じつつ手を借りてベッドから降りた。


「ありがとうございます…」

「いや、……伊織の言う通りだな…」

「え?英部長…何か言ってたんですか!?」


本当に今日ほどあなたを怨んだ日はありませんよ、英部長。


「いや…」

「なんですか?」

「経理に小さくて可愛らしい女性がいるって…いや、あいつも悪気があるわけではないと思うが…俺も、…あー、君は可愛らしいと思うんだが…」


ごにょごにょと濁しながら話す社長に私は目を見開いていた。
容姿端麗、頭脳明晰、しかも紳士とくれば女には慣れていると思っていた。
けど、私の目の前にいる社長はそんな雰囲気なんて微塵もなくて、口元を隠す大きな手から少しだけ見える頬が心なしか赤いようにも見えたから。