「ありがとうございます、おじいちゃん…」

「……何だか照れるものだな。本当に女の孫ができたみたいだ。」


本当に嬉しそうに笑うおじいさんに私も釣られて笑った。
まさか、会社の一番偉い人とこんな風に話すなんて想像すらしていなかったけれど、


「奏多ちゃんは高校を出てすぐに此処に入ったのかな?」

「はい、正直…大学には行く気もなかったので。」

「そうか、我社に尽力してくれてありがとう、これからもよろしく頼むよ。」


こんな一平社員に言葉をくれるおじいさんに私もこんな大人になりたいと思える。


「それはそうと、」


多少言いにくそうなおじいさんに首を傾げ、おじいさんを見るのと同時に軽いノック音が聞こえ、私もおじいさんも同時に扉を見つめていた。


「入りなさい。」


たった一言だけ言うおじいさん、けれど言葉には威厳が滲み出ていて、あぁ、この人は本当にトップに立つ人なのだ。と妙に納得してしまった。

おじいさんの声で開かれた扉からは背の高い男の人が小さく介錯し、部屋に入ってきた。


「お呼びだと聞いたのですが…」

「あぁ、まぁ座りなさい、拓海。」


拓海、と呼ばれた男の人…
黒い長めの髪を後ろに流し、ダークグレイのスーツにネイビーとホワイトのストライプのネクタイ。
きっと誰が見ても見惚れてしまう。そんな男の人だった。