「……偉そうに」
「そうでもねーよ」
「褒めてねーよ」
なんだこれ。
なに、告白ってこんなにムードが無いものなの?もっと、夜景とか見て、ロマンチックなものじゃないの?
「俺らの間にムードを求めるな」
「それはそうだけど」
「まぁ俺も居酒屋の前で告られたのは初めてだけど」
「うるさいなぁ、しょうがないじゃんか!どうせ振るくせに!」
「俺振るなんて言った?」
「言ってな……え、なんで!?」
どういうこと?
だって、告白という告白を全て断ってきたこの男が、私の告白を断らないわけ…
「なぁ」
不意に、右手がとられた。
驚いてすぐの側の顔を見上げると、目があった。
ねぇ、私達の間にはロマンチックなムードなんて流れないんでしょ?
だったらどうして、こんなに体中が熱いんだろう。
握られた右手が、熱い。
「……倉田、」
「お前がたらたらしてるからさ」
もう終電無いんだけど、どうする?
無言で歩く背中を見つめて、どうなるのだろうと考えていた。
ねぇ、私馬鹿だからさ、ちゃんと断ってくれないと勘違いしちゃうよ。わかってる?アホ倉田。
でもね、握られた右手が熱いのは、倉田の手も熱いからなんだよ。
「ねぇ」
「何だよ」
「私、告白の返事、聞いてない」
「聞きたい?」
「当たり前でしょ、馬鹿」
「偉そうだな」
そんなやりとりをして、お互いに少し笑った。
でも私達、何かが変わったと思うの。私の気のせいかな?
ねぇ、倉田。まだ夜は長いよ。
これからどうしようね?
そう呟いたら、倉田は振り返って、得意気に微笑んだ。
「もう、俺はとっくに惚れてたよ、バカ」
fin.

