驚いたことに、私はまだ倉田にきちんと告白していなかったらしい。
いや、好きとバレている以上、もう告白したも同然だとも思うんだけど。
どうやらこの小難しい男は、そんな言葉じゃ通じ無いらしい。
「やっぱりお前、アホだな」
「今更言わないでよ、うるさいな。どうせ私が付き合ってって言っても断るくせに」
他の女の子たちのように、私がきちんと告白しても、どうせこの男は断るのだ。あの野田さんでさえ振られたというのだから。だから、
「それはわかんねーな」
「は?」
「いやだから、言われてみないとわからないだろ」
何を言っているのだろう。もしかして酔ってる?
だけど倉田はとてもお酒に強いのだ。この数杯程度の量で酔うわけがないことは知っている。
私の困惑した顔を見て、倉田が小さく笑った。
それから少しだけ離れていた私達と距離を詰めると、何とも言えない表情で口を開く。
「俺、まだお前から告白されてない」
「いやでも好きだってバレて」
「あれはノーカウントだ」
「勝手だなこの野郎」
「お前が言うか」
「だったら今ここで言うよ、好きだばか!いい加減彼氏になってよ!」
私の言葉に、倉田が目を見開いた。
ふん、言ってやった。
……言ってしまった。
勢いとは言え、ついに言ってしまった。
あぁ、もう。
「やっと言ったな」

