「私と付き合うという選択肢はないんだよね……」
そろそろここを出ないと終電に間に合わなくなってしまう。
どれだけ話が盛り上がろうと、きちんと終電まてには帰る私達。終電無くなっちゃったね、なんて色っぽい話、私と倉田の間には存在しないのだ。
古い暖簾をくぐる。割り勘にしようと決めているのに、毎回あまり私にお金を出させれくれないと倉田の背中に少し不満を持ちながら、そんな言葉がポツリとこぼれた。
するとその背中が振り返る。
「俺さ、お前のこと、振ったっけ?」
「は?」
なんだと?
「いや、俺お前のこと、断った記憶ない」
「えっ、ちょっと、いやいやいやいや」
何を言ってるの倉田くん。
私はちゃんと倉田に好きだと伝えて、それから。
……それから?
「だって私、倉田好きだって言ったよ?」
「だから、うん、って答えて」
「それから、……あれ、私それで終わってた!?」
なんてことだ!
あまりに倉田があらゆる告白を断るから、私も振られた一員だと思い込んでいた。……そんなこと。そんな。
「そんなことある……?」

