「倉田ってさ、どんな子がタイプなの?」
素朴な疑問だった。今までも色々な子の告白を断っていたけれど、野田さんのような誰もが憧れる女の子さえ断ってしまうなんてどんな好みをしているのだろう。
私の質問に、倉田はジョッキを口に運ぶ手を一瞬止めた。
そして視線を少し逸らした。
「……好みなぁ」
「野田さんみたいな可愛い子も違うんでしょ」
「まぁ」
「可愛い上に巨乳なのに」
「それは非常に良いと思うけど」
「じゃあ何で振ったの?」
「なに、俺あの子と付き合った方がよかったわけ」
「そんなわけないじゃん断ってくれて万々歳だよ」
「正直すぎるだろ」
私と倉田が出会ったのは、今の会社に入社した時だった。
同期として、新入社員の研修を受ける時に知り合ったわけだけど。
それから3年が経とうとしている現在まで、彼女がいた形跡がないのだ。
まさか。
「言っておくけど、俺はノーマルだぞ」
「あー、良かった……」
「アホな心配するなよ」
倉田が追加で注文した生ビールとだし巻き卵が運ばれてきた。
この居酒屋のだし巻き卵は出汁が効いていて、ふわふわで美味しいのだ。
初めて食べた時、2人で絶賛したのを覚えている。

