週末の金曜日。ひそかに想いを寄せている(まぁ本人にはバレてはいるが)倉田と2人で飲みに来た小さな居酒屋。
いつも通りくだらない話をしていると、倉田がいきなり切り出したのだ。
「野田さんに告白された」と。
「野田さんかぁ……」
彼女の姿を頭に思い浮かべる。
くりくりと子犬のような目に、小さな鼻と口。ふわっふわのセミロングの髪に、華奢な体。
誰もが口を揃えて「かわいい」と認めてしまうような、天使のような女の子だ。
そんな野田さんに告白されるなんて。しかも。
「……まさか振っちゃうなんて」
「別に嫌いじゃないけど、好きでもねーし」
「何よ、上から目線」
「事実だろ」
「偉そうに」
「お前な、好きな男に女が出来なかったんだからそこは喜ぶところだろ」
「なっ……、嬉しいに決まってるでしょ!本当にありがとうございます!」
「うるせーな」
嬉しいに決まってるじゃんか。
……野田さんには悪いけどさ。
振ったも聞いた時、安心したと同時に、またか、も思った。
倉田はモテるのだ。倉田なのに。倉田のくせに。
実際、こんなやりとりは今回が初めてではない。ただ今までは私の気持ちを隠していたから、平然を装っていたけど。

