私の目の前をバウンドし、転がっていく。

当たらなくてよかった、と安心しつつ、お弁当を置きボールに近づく。

バスケットボールだった。大きいから男子のものだと分かった。

すると屋上へと続く階段から音が聞こえた。振り向くと背の高い白シャツがよく似合う人が近づいてきた。

「当たらなかったですか?」

目がものすごく綺麗。
大人っぽい雰囲気が漂っている。

「え、あーはい。大丈夫です」

どうやらさっきのボールは彼のものだったらしい。彼のバスケットボールを渡すとそのまま颯爽と階段を下りてしまった。

と同時に衣緒が戻ってきた。
驚いた顔で「今の紫藤くんじゃん!」って言ってきた。あの人が紫藤なんだ。

確かに容姿がすらっとしていて、顔も目が綺麗で、結構かっこいい。
だからといって特に感情が湧いてくるわけではないけど。

「紫藤くんと話したかったなぁー。藍、彼と話した?」

残念そうに衣緒が聞いていた。

「え、いや、なんかボール拾ってそのまま帰っちゃったよ」