男はまた何かを呟いたようだったがその言葉を聞き取ることは叶わなかった。
体を動かすことが出来ないアリアは、男がアスランの首を絞め持ち上げる様子をただただ見つめる事しかできなかった。
「お父様!!!!!!」
卑劣な叫びは男の力をますます強くさせるだけだった。
アスランはアリアに目を向けると優しく微笑んだ、ような気がした。
次の瞬間、アリアの視界からアスランと男は消え、一面の深い青ときらきらかがやく光が広がる。
何がどうなったのかわからず、思考回路を巡らせると、浮かんだのはアスランが呪文を唱えていた記憶。
転移魔法だ。と認識した直後に、自分が転移したのは上空なんだと認識する。
体は燃えるように熱く、アリアは死を覚悟した。
ふと、赤ちゃんの頃の記憶が頭に浮かぶ。
自分は泣いていて、周りの人は笑っている。
手には柔らかい感触。
自分の声と重なって、自分以外の泣き声も聞こえる。
小さなアリアはゆっくりと横を見ると自分と全く同じ赤い瞳と目があった。
「……死の間際は……誕生を思い出すものなの…?」
アリアは小さな声でそう呟くと、そっと意識を手放した。
