「……入って」


その言葉に、「ありがとう」と返して、部屋に入る。


いつ来ても綺麗な部屋だ。

シンプルで、仕事に関する本が沢山本棚に並んでる。


れみの服だらけの部屋とは大違い。

って、こんな時までれみのことを考える俺は本当に最低だ……。


ソファに座る。

成美がキッチンでコーヒーを用意してくれてる。

コーヒーの袋を見て気付く。



「それ……俺が好きなコーヒー豆……」


「陸、これ好きだって言ってたから……いつ陸が来てもいいように買って置いてたの」


赤く腫れた目を少し細めて笑う成美。

そんな成美をどうして俺は、好きになれないんだろう。

こんなに俺のことを考えてくれてる成美を、なんで……。


「ありがとう……」


それしか、言えなかった。