天狗の娘



 一瞬の浮遊感の後、身体が解放された。


――そして紗希は、大きな道の真ん中に呆然と立っていた。

江戸時代の、大河ドラマを思い出させるような造り。


透き通った月光に濡れた大通りは、閑散としている。

前方遥か彼方に見える、朱塗りの塔院造りの高い建物が目を引いた。

紺色の澄み渡った空に、その塔は浮き上がっているようにも見えた。