天狗の娘



「おまえ、境門の事は知ってるだろ?」


森の中を歩き出した隼は、紗希に問いかける。


「うん」


母に連れられて一度だけ来たことがある。

確か、境門の向こう側は神領だと聞いた。


「その先に慶一郎様から預かっている、剣道の道場があるから、ひとまずそこに隠れろ」


「うん……」


狐のお面を思い出して、背筋に悪寒が走る。


「……ねえ、隼」


紗希は言った。

「何で、私とお父さんは処刑されそうなの?」