天狗の娘



「……思い出した」


紗希が呟くと、隼は「そうか」と、そっけなく言った。

そして直ぐ険しい表情を浮かべると、言った。


「お前、死にたくないだろ」

「え?」

「下手すると、お前も、慶一郎様も処刑される」

「えっ、処刑……?!」

隼の顔を見ると至って真面目で、紗希は混乱した。

「じょ、冗談でしょ?!」

思わず声が大きくなる。

隼は首を振った。

「常世で決定された事だ。
人間の力ではどうにもできない。
紗希は見つかり次第、慶一郎様と共に、黄泉の国へ島流しにされる」


よく磨かれた黒水晶に似た隼の瞳孔に、目を見開いた自分が映りこんでいた。

何か大変な事に巻き込まれてしまったという事だけが、辛うじて理解できた。