天狗の娘



「……あなたは」


母親が口を開いた。

「これから、どうなさるのですか?」


その口調が、幼い子供に向けられるそれではなく、紗希は母親を見上げる。


「しばらくこの家で面倒を見ようと思う。
頃合いを見て、白天狗の所へ連れて行きたい」

押し黙った隼の代わりに、慶一郎が唸るように答えた。


「慶一郎様、よろしいのですか……?」

その声で弾かれた様に、少年が振り返る。

虚ろな瞳に突然光が宿った。


「ああ」

慶一郎は言い、母親を見やる。

「……わかりました。どうぞ」

彼女は何かをこらえる様に低く呟き、少年を部屋に招き入れる。