天狗の娘



「……俺は」


少年が突然口を開き、紗希は飛び上がりそうになる。

「俺は天狗です。
向こう側で両親も兄弟も死にました」


幼く無機質な声だった。


母親は息を飲み、慶一郎と目配せをした。

慶一郎が頷いたのを確認すると、再び少年に目を落とす。

爆発のような雷鳴と共に、凄まじい閃光の青色が四人を照らした。