天狗の娘



「慶一郎さん、おかえりなさい」


紗希はその声で我に返って、後から来た母親の背後に隠れた。

母親は懐中電灯を拾い、慶一郎に向ける。

そして、傍らの少年に気が付いて問いかける。


「この子は……?」


母親に光を当てられた少年は、光源へと顔を上げた。

母親の背後であるという安心感もあって、紗希はまじまじと少年の顔を観察する。

疲れ切っはているが、賢そうな綺麗な顔立ちをしていた。