「……お父さんは、どうしてこの向こうにいるの?」 少女は鳥居の先を指差した。 「お父さんが、神様だからよ。 あなたのお父さんは、氏神様と言って、この土地を守る神様なの」 「……えっ?」 少女は、大きな目を更に大きく見開いて、母親を見ていた。 一時の間、少女と母親の周囲の空間が、止まったかのようにも思われた。 「…………お父さんが、神様?」 大木の枝葉が、ざわざわと蠢いていた。