「ほぅ、なかなか雅じゃのぅ」 彼はそう呟いて、苔色の瞳孔をすいと細めた。 視線の先には、一基の石造りの鳥居。 斜光の燃えるような樺色に向かって聳えている。 むせ返るような草いきれも、痛いほどの残照も、ここでは背景にすぎなかった。 山道を抜けた先の、切り立った崖の上に悠然と構えるその姿は、凛々しくも瀟洒で、見る者を圧倒し、魅了した。