「髪、濡れてるじゃん。 また熱出ちゃうよ。」


里子は晴太の首にしがみついた。
寝起きの晴太は髪がくしゃくしゃになっている。

晴太はソファに里子を抱いたまま座った。
里子はまだ晴太の首にしがみついている。

あれ?
晴太さん、ちょっと髪形変わった?


里子はしがみついている顔を起こして晴太の顔を真正面で見た。


「晴太さん、ちょっとイメージが変わりました?」


晴太は含み笑いをしながら悪戯っぽい目で里子を見た。


「どう変わった?」



「なんかちょっとだけ真面目っぽく見えるというか、あ、でも今までがそう見えなかったわけじゃなくて・・・」


里子は言うほど墓穴を掘っている。


「実は真面目になったんだ・・・」



「え?」



「今はちゃんとののちゃんのいうように真面目に働いてる」


里子はキョトンとしている。


「真面目な探偵事務所ですか?」



晴太はこんな風に里子と話せている事が信じられなかった。

美津子の家を出たあの日、俺は許されるのならもう一度自分のために生きてみたいと思った。
でも、長い間荒んだ生活をしていた俺は前へ進み出す一歩が中々出なかった。

その時に里子の顔が心に浮かんだ。
笑顔と泣き顔で俺を真っ直ぐに見てくれている里子の顔が。


まともになって里子に会いに行こう。
俺が幸せになるためには里子が必要だ。


いつんなるか分からないけれど必ず迎えに行く。