夏子は最後の客を見送って、やっと里子達の元へやってきた。
涙で目を腫らしている里子を見て、夏子はため息をついた。


「ののちゃん、今日はエクステはやめとこうか?」



「え? 何でですか?」


夏子は苦笑いを浮かべて里子を見た。


「涙が止まらない間はエクステはもったいないよ。
すぐ取れちゃうからね。

今日はネイルをしようか?
仕事に差し支えないようにちょっと控えめに」


夏子はそう言うとてきぱきと準備を始め、里子の目の前に座った。
夏子は淡いブルーの色を選んだ。


「涼と話してるのをちょっと聞いたんだけど・・・」



「はい・・・」



「ハルはなんでケガしたの?」



「悪い人に狙われて・・・
ボコボコにされたみたいで」


里子はまた涙が滲んできた。
晴太を助けてあげたい・・・


「それでもう会わないって?」



「・・・はい」


夏子はネイルから目を離すことなくでも力強い声でこう言った。


「ののちゃん、ハルの事はもう諦めなさい。

私が知っている晴太は、こう決めたらそれを突き通す。
自分の中で納得しない限りはののちゃんの元へは帰ってこない。

きついようだけどそれがハルの優しさなんだ・・
分かってあげて・・・」


里子は頷けなかった。
諦めるなんて無理だもの・・・



「ほらできた。
青空を思わす柔らかいブルーにホワイトストーンをポイントにのせてみました。

ののちゃん、晴れた空に見える?
晴太なんか忘れちゃえ。

でも、晴太の青空だったら逆に思い出しちゃうか・・・」