中肉中背、見た所20代くらいの男。

その足取りは重い。

怪我をしているのか、それとも疲弊しているのか。

足を引き摺るようにして歩く姿は、只事ではない。

道行く人々も、彼の様子を遠巻きに眺めている。

が、その殆どは傍観者。

疲れ切っていようが、負傷していようが、『自分には関係ない』と思っている。

正確には、関わりたくないと思っている。

病院に連れて行ってくれなんて言われるのは面倒だし、もし何かの事件に関係していたら尚更だ。

誰だって、厄介事は背負い込みたくない。

しかし。

「お兄さん、大丈夫?」

向日葵は迷う事なく、男に声をかけた。

困っている人間を見過ごせない。

彼女の家系も、この間まで住んでいた街も、通っていた中学も、そういう情に篤い者ばかりだった。

自然と向日葵も、そういう性質が身に付いてしまっていた。