可愛い子には旅をさせろ、とは少し違うかもしれないが。

両親はそれを快く了承した。

向日葵の姉も、遠く離れた土地…分かりよく言えば海外のようなものだが…に嫁いでいった。

薙沢の娘達は、好奇心旺盛で冒険心に溢れているのだろうか。

或いは向日葵が、そんな姉に触発されたのかもしれない。

今日は、そんな向日葵の新天地での初日だった。

沢山の買い物をし、沢山の見聞を広め、ご機嫌の体で向日葵は街を歩く。

すっかり日も傾いてきた。

そろそろ帰ろうか。

今日から憧れの1人暮らしだ。

そんな事を考えていた彼女は。

「?」

夕暮れ迫る通りを、フラフラと歩く1人の男に気付いた。