地味な私が恋したヒト



そう言って自分の控え席に戻ろうとした。


「早坂、待てよ……!」


そうやって言う桜井くんの声が聞こえたけど、聞こえないフリをして歩き出した。


ーーー……


「ゆら、桜井と何話してたの〜?」


控え席に戻ると舞香がニヤニヤしながら私に話しかけてくる。


「別に何も話してないってば。それよりお昼ご飯食べよ?」


何も話してないっていうか、何も言えなかったんだよね。


結局お題のことも言えなかったし……。


それは言わなくて正解だったのかもしれないけど……。


「でもさっきゆらが桜井を連れていったのはびっくりしたなー」


教室に戻りながら舞香と話す。


「あれは……仕方なかったんだもん」


“好きな異性”


なんて桜井くんしかいないし、思い浮かばない。


私、仲いい男子とかもいないし。


「ふーん?で、何だったの?お題」


やっぱ突っ込むよね……。