しかも借り人競争って言ってもただ一緒に人を連れてゴールすれば問題ないんだ。
お題の紙は審判の人にこっそり見せればいい仕組み。
だから桜井くんに内容がバレることはない。
だから頑張るんだ……!
私は桜井くんのクラスの控え席の方へ向かう。
すぐに桜井くんを見つけた。
桜井くんは誰かと話すことなく、ただ黙って競技を見ていた。
そんな桜井くんに私は勇気を出して話しかける。
「桜井くん……!」
普段よりも大きめの声で言ったから聞こえたと思う。
でも、桜井くんからはなんの反応もない。
私は怖くなって桜井くんの方を見る。
桜井くんは黙って、私を見つめていた。
「お前、行ってやれよ」
そのうち桜井くんのお友達がそう言い出してくれた。
桜井くんは来ないつもりなのかな……。
私のこと、やっぱり嫌いだよね。
一緒に走りたくなんてないよね……。
でも、私……このままなんて嫌だから。
「桜井くん、一緒に来てほしいの……!」
さっきよりも大きな声で言う。
周りがザワつくのがわかった。
女子からは“何でアンタなんかが?”っていう視線が痛いほど伝わって来る。
特にアヤさんは私のことをすごく睨みつけてきた。
それでも負けない。
私がここで諦めたら、クラスにも迷惑が掛かる。
それにね……私、桜井くんとゴールしたいの。
好きな異性なんて
桜井くんしかいないから……。

