地味な私が恋したヒト



え……?


不思議に思って顔を上げてその人の方を見る。


そこにいたのは……桜井くんだった。


な、なんで!?


いや、何でって桜井くんだって自販機くらい来るよね。


重要なのは何で自販機にいるのかじゃなくて、何で私にリンゴジュースを差し出してるのかってことだよ。


「早く受け取れよ」


私は考えるようにジッと桜井くんを見つめていたから、差し出されたリンゴジュースを受け取らずにいたわけで。


「な、なんで私に……」


やっとのことで絞り出したのはそんな一言。


私、桜井くんの前だとうまく話せない。


思ってることが、なかなかうまく言えなくて。


「リンゴジュース欲しかったんだろ?」


えっ……。


桜井くん、私がリンゴジュース飲みたいのわかってたの!?


口に出してないのになんで?


「飲み、たかったけど……でもそれは桜井くんのお金だし、桜井くんが飲むべきだよ」


ここで素直に“ありがとう”ってニコッと笑いながら言えたら、可愛いんだろうけど。


今の私にはそんなことをいう勇気もければ、そんなことをすることさえ許されない気がした。