「あ、郁ちゃん来たみたいだよ」

「え……」

「ほら、行ってくれば?」

俺の手からコーヒーを奪い取って、グイグイ背中を押す誠二。押すんじゃねぇバカ。解決策が浮かんでない。


「はい、行ってらっしゃーい」

ポン、と給湯室から押し出されて、仕方なく自分の席……高野の隣に向かう。

後姿にすでに緊張する。

あーもう…、どうすればいい。

何これ、まじでしんどい。


「お、加地おはよー」

「…はよ」

同僚から挨拶されてそれに返事を返したけど、俺の名前が聞こえたであろう高野は微かに肩を揺らして立ち上がった。

「あの…、高野…」

おはよう、なんて言葉をかける前に、立ち上がった高野はそのままスタスタと歩いて行ってしまった。


…え、何これ。

今の何だ。避けられた?マジで?

ちょっと待て。しんどい。