「俺が着てこいって言ってんのに他の女と比べるわけねぇだろ。嫌なら別のやつに借りるけど」

「や、大丈夫です」

俺結構頑張ってるつもりなんだけど。

何なんだろう。こう、少しも可能性を感じてない高野って。鈍感かよ。


「加地くんそんなにあたしの浴衣見たいの?」

少しニヤニヤしながらそう聞いてくる高野。

バカだなお前。ほんとバカ。

自分のこと好きな男の誘いには乗るし、ほんとに俺のこと好きなのかよく分かんねぇし。見に行く映画は三角関係ど真中だし。

お前がややこしくしてんだそ。

…まあでも、俺の今までの態度を含めるとそんなこと言えるわけもない。

だから仕方ない。

正面からいってやろう。

「見たいから誘ってんだろ」

この鈍感女。