「…あの、加地くん…」

「何ですか」

給湯室から出て行こうとした俺を引き留める涙目の先輩。

俺に嫌われんのが嫌だったなら、正々堂々来ればよかったじゃん。少なくともそっちの方が可能性あったよ。


「あ…の、ごめんなさい…」

そういえば、バレンタインに勇気を出したとこは正々堂々だったのか。

この状況に原因は少し俺にもあるわけで。俺が何でも断るから傍にいた高野に腹が立ったんだろう。

やり方は間違ってるけど、これ以上責めるつもりない。


「…俺はもう別に怒ってないんで。それと、謝る相手は俺じゃないですよ」

もうコーヒーを淹れ終わってそれを持ったまま待っていた高野は、居心地が悪そうに俺を見てくる。

「あ、それと、俺もすみませんでした。バレンタイン受け取らなくて。好きなやついたんで、一つも受け取ってないんです」

好きなやつかと言われれば、それは何だか違うような気がするけど、そこはこの際もういい。

咲良のことを気にしていたのは事実だから。


「高野、コーヒー早く」

「あ、うん」

先輩に軽く礼をして給湯室を出ると、高野がカップを2つ持って俺の後をついてくる。