フードとドリンクが全て揃った所で那智さんのエアーカラオケリサイタルが終了し、一仕事終えたような顔で椅子に戻ってきた。

いやいや、エアーカラオケで満足するって可笑しいからね!カラオケの使い方が斬新すぎるよ那智さん!



「ふう、少し声を張りすぎたみたいだな喉が…げほっげほっ、おえっ。あ゛ーあ゛ー…んあ、次は林檎ちゃんの番だぞ。ほいマイク」



額に汗を滲ませて、キラリ、爽やかな笑顔を向けながらマイクを渡してきた。…汗ばんでるし。


汗で濡れているマイクを無理矢理握らされて硬直した。


いざマイクを手にするとなると心に迫るプレッシャーが尋常じゃない。あ、これマジでやばいやつだ。

ダラダラ、ダラダラ、冷や汗が吹き出る。


ヤッパ、カラオケ、ムリ。コワイ。



──ニゲル、ガ、勝チ!



「っうわあああああ」

「こらこら何で帰ろうとしてんの」

「ヒィイイ!嫌です!歌えないです!無理です!お家に帰らせて下さいぃぃぃ、」



死に物狂いで逃亡を図れば、那智さんに阻止された。

首根っこを掴まれた私は席に座らされる。

目には涙が浮かんでいた。生き地獄だ。