太陽と月の後継者


クランは長い廊下を突き進むと、
一つの部屋を開ける。




「じゃ、衣装とメイクはアキに任せたよ。
俺は外で待ってる。」

「任せときな!」

クランが出ていくと、
アキは早速衣装選びをする。

「クレアのその白金の髪は目立つからなー…。」

そう言って、
アキはクロエの髪の色を
魔法で操作する。

「このやり方、結構使えるんだよ。
後で教えるな!」

ウインクをするアキはやはり
美人で何処と無くレイに似ている。

やはり、朱雀族の隠し子というのは事実なのだろうとクロエは思った。

「後は…、
これと、これと、これ!」

赤薔薇のついた黒い膝丈ドレスに、
パンプス、薔薇の髪飾りをクロエに渡していく。

『これ…』

「よし、ちゃっちゃと着替えちゃって!
あたいはあっちで待ってるよ。」

アキはそう言うと、有無を言わさず隣の部屋に移動していった。

クロエはドレスを身にまとい、
高いヒールのパンプスを履く。

『体のラインが…』

自分の姿を映す等身大の鏡を見て、
クロエはため息を吐いた。

『自分じゃないみたい。』

漆黒に染まる自分の髪色を見て、
アキは凄いと感心する。

クロエは慣れないハイヒールの
パンプスを履いて、隣の部屋へ移動した。

「クレアっ。やっぱり綺麗だな。
その髪飾り貸しなよ、

ここに座って。」

クロエが鏡の前の椅子に座ると、
丁寧に髪をとかし
薄く化粧をする。

「できた」

目を開け鏡を見ると、自分とは思えない程綺麗な女性がうつっていた。

艶のある黒髪は赤薔薇の髪飾りが付けられ、

瞳は魔法で両目とも紅。


「瞳や髪の色は一定の時間が経ったり気を抜いたりすると元に戻るから気をつけるように。」

『ありがとう!』

「あぁ!最後に…」

そういうと、
耳に小さいイヤリングをつけられる。

『これは?』

「通信機だよ。これに触って心の中で呟けばみんなに聞こえる。」

“頭派隊が作ってくれたんだ”

そう言うと、
クロエは腕を引かれて先程の部屋へと戻る。

「かわいいですね。」

ソファーに座ってコウがそう言うと、
クロエは頰をかいた。

「あったりまえだ!
あたいが選んだ服が似合わない女はいないよ!」

アキは腰に手を当てて鼻高々としている。

「…素がいいから当たり前だろ。」

シルバーの馬鹿に
するような口調を聞いて、
アキはギロリと睨みを利かせた。

「ま、それもそうだな。」

アキが珍しく諦めて、コウの隣に座った。

「アキ、珍しい。
明日はきっと天地がひっくり返るわ。」

アリスは兎の人形を抱えながら空中をぷかぷかと浮遊する。

アキはピシリと眉間に皺を作ると、
シルバーがまた突っ込みを入れた。

「眉間に皺を寄せると今以上に禿げるぞ。」

「あ”ぁ?」

アキはとうとう痺れを切らしてシルバーとアリスの頭をネジ繰りまわす。

『頭とれそう…』

クロエがポツリと呟くと、肩をポンと叩かれた。