人々が夜の闇にのまれ、眠りに落ちる頃。
学園の時計塔の中ではある出来事が起きようとしていた。
「ビアンカ嬢、なにか御用ですかー?」
「…その呼び方やめてよね」
多くの歯車が入り込んでいる時計塔の中、月の光がキルの瞳をうつしだす。
妖艶な真紅に底光りする瞳は飢えたようにビアンカを見つめていた。
「貴方、クレアの正体に気付いているわね」
正体、とは天羽のこと。と言っても、クロエにはまだまだ知られざる秘密があるわけだが…。
「…なんでそう思うの?」
「クレアを見る目が気持ち悪い。貴方、闇属性の家系でしょ?…家の事情は知っているわ。」
「気持ち悪いって酷いな…。」
そう言うと、キルはビアンカの後に回る。
「な、なによ」
「天羽ってどんな味がするのかなー?」
ビアンカはびくりと肩を揺らす。
“やっぱり、気付いてる。”
「ビアンカ。君がクレアの代わりに俺に血をくれるなら、それでもいいよ?」
キルはビアンカに後ろから抱きつき、
首に舌を這わせた。
「…本当に、それでいいの?」
「うん、」
“今はね。”
と消え入りそうな声で言うと、ビアンカに噛み付こうとする。
「待っ!?」
その声が聞こえたビアンカは必死で抵抗した。
「あーもう、暴れんなよ」
面倒くさくなったキルはビアンカと目を合わせた。すると、力が抜けたようにキルに倒れ込む。
吸血鬼の瞳には、
見たものを意思関係なく魅了する力があった。
それは夜になるにつれて力を増す。
ビアンカは夜に呼び出したことを後悔した。
「それじゃあいただきます。」
キルが今にも噛み付きそうになったその瞬間、突風が巻き起きた。

