招集場所に着くと、そこにはすらっとした女生徒が立っていた。
「早いのね…。選手番号001クレア・フルームで間違いない?私は3年Sクラスのアイリス・フリード。この大会の誘導係を努めさせてもらっているわ。よろしく。」
深緑色のショートヘアーに、青縁のメガネをかけた知的そうな女がクロエに声をかける。
『はい!よろしくお願いします。』
クロエは人懐っこい笑顔を浮かべた。
「初めての試合だろうけど、
自信を持って。貴方なら予選を通過できるはずよ。楽しみにしているわ」
彼女はそう言うと、クロエを待合席に座らせた。
クロエは部屋を見回すと、一人の少女が部屋の隅で蹲っているのを見つけた。
(さっきの子だ)
部屋の隅にいたのは、先程の試合で敗北した、Aクラスで小説家の少女だった。
勝負に学年もクラスも関係ない。そう知らしめられた気がしたクロエは気を引き締め前を向く。
「選手番号001。闘技場の門前で待機してください。」
クロエは、バレッタを杖に変形させ
真っ白なフード付きのマントを身にまとった。
フードを深々と被り一息つく。
『負けない』
「ただいまより、第5闘技場。第3試合目を開始します。選手番号001。1年ながらの優勝候補。クレア・フルーム!!!
対するは、六大貴族令嬢。
ビアンカ・チルダ!!!」
歓声とともに、入場してくる両者には、この歓声は聞こえていない。
観覧席と闘技場には特殊なシールドかはってあるのだ。
『六大貴族…?』
まさか最初から強敵と戦うと思っていなかったクロエは、フードのしたから鋭い眼光を覗かせる。
何処か、凶器のこもったその瞳は凍てつく氷のようだ。
「あなたが謎の天才美少女…?全ッ前大したことないじゃない。ビアンカの方がスタイル良いわ!顔を見せたらどうなの?」
彼女はじぶんの見た目や能力に絶対的な自信を持っている。
黒に近い紫色のウェーブした腰までの髪を高い位置でツインテールし、赤いリボンで縛っている。瞳は髪と同じ色だ。
確かに飛び抜けた美貌の少女なのだが…クロエには敵わない。それに性格が良くなさそうだ。
「なんとか返事しなさいよ!」
クロエは戦闘に集中しているため、言葉が頭に入ってこない。
『ー雷竜ー』
彼女がそう唱えると、
杖の白い水晶が輝き全体に雷を帯びた。
空には雷竜が空を飛び回り、ビアンカめがけて落ちていく。
「ら、雷竜!?
どんだけ高度な魔法使ってんのよ……!
早いけど仕方ないわ、ー解放ー!!」
彼女は早速解放をして、間一髪のところで雷竜を跳ね返した。
紫色の髪はさらに伸び、ビアンカの背中には漆黒の翼。
悪魔の翼がはえていた。
手には大鎌を握っている。
『ー炎竜ー
ー黒龍ー
ー白龍ー』
四種類もの伝説の竜を一気に召喚するクロエに会場は息を飲んだ。
それには、
ビアンカも焦りだしたようだ。
「なっ…!?わ、私だって…!
ー黒の騎士ー」
そう唱えると、第5闘技場の上空は曇り始め、影のような真っ黒な騎士がクロエの前に現れた。