そんな頃、闇の世界では着々と“何か”が
進められていた。

《そちらはどうだ?》

「あの方はまだ能力が目覚めていないようです。」

《そうか、ではそろそろだな。》

「はい」

怪しい男の含み笑いと、女の冷めた声。

《引き続き、監視を頼む。》

「はい…“父様”」

女がそう言うと、通信が切れた。

女は、ベランダへ出ると
昇りかけの太陽を街の端から見据えた。

「これからが楽しみだ“姫君”」

赤い髪が風に吹かれて揺れる。
右目の下には十字架の紋様。

そのシルエットは…。