『ひ、広いっ!!!』

思わず声をあげるクロエは、
目を瞬かせている。

白を基調とした窓のない空間。想像も出来ないほどの広さに、圧倒されていた。

「じゃあ、誰と誰が戦う?」

レイが待ってました!と言うように聞いてくる。

「じゃあ俺とヨウテスがやる!」

リオが楽しそうに笑うと、ヨウテスが頷く。

ふたりが空間の真ん中に行くと、
レイが合図した。

「よーいっ、開始っ!!!!!」

合図と同時にヨウテスは、
自分のピアスを太い剣へと変形させた。

『ピアスが杖だったんだ…!』

初めて闘いを見るクロエは、興味津々だ。
一方リオはブレスレットを竪琴に変形させる。

「ー風の狂想曲ー」

そう言ってリオは竪琴を一本だけならした。

次の瞬間、身を裂くような突風が巻き起こり、耳が潰れそうなほどの爆音が響き渡る。

『シールド』

クロエは咄嗟にルカとレイ、そして扉を守るように円形のシールドをはった。

「ありがとうクレア」

『ううん!』

そう言って再び前を向くと、
ヨウテスの頬や腕、至るところに傷がついて血が出ていた。

「相変わらずだな、リオ」

そんなヨウテスはまだまだ余裕そうに
口に笑みを浮かべている。

リオも同じように笑っていた。

「ー地柱ー」

ヨウテスがそう唱えると、いくつもの地の柱が床から伸びリオを襲う。まるで針山だ。

今にもリオに突き刺さりそうな
地柱をあと一息というところで止められた。

「ー風の加護ー」

『うそ…六大貴族?』

リオの周りには、突風が吹き乱れ
まるでリオを守っているかのようだ。

ー風の加護ー
この魔法は六大貴族の中でも、
風を司る大狼族
しか使えない技である。

六大貴族とは、
この世界で五大魔法使いと同じくらいの地位をもつ貴族である。

(五大魔法使いより少し下、
上級魔法使いより上の地位。)

その中には、
光を司る『妖精族』、
闇を司る『悪魔族』、
火を司る『朱雀族』、
水を司る『龍鬼族』、
風を司る『大狼族』、
地を司る『幻人族』、
がいる。

家系により種族は様々で、この他に『吸血鬼』、『蜘蛛』、『人魚』等がいる。

そして、種族は属性や魔力の大きさによって違う。その筆頭が先程言った六大貴族なのだ。

また、普段は人の姿だが、杖を使い、自らの力を全力で使う時には種族のありのままの姿になる。

その時に使う技が『解放』である。

「そろそろ、“解放”するか?」

「そうだね、はやくケリつけたいし。」

そう言うと、ふたりで顔を合わせ不敵な笑みを浮かべた。

「「“解放”」」

たちまち淡い黄色と緑の光がその場を包み込む。