そう言って笑うリオはやはり、小悪魔だと思うクロエ。
『あ、ありがと…』
そう思いつつ無自覚で顔を赤くするクロエも小悪魔だと思うヨウテスだった。
「行こーぜ」
そう言って歩き出すヨウテスに慌ててついていく。だんだんと賑やかな声が近付いて胸が踊り出す。
『わぁ!!ひとがいっぱいっ』
初めて来る街に、目を輝かせた。人々は歌い踊り、様々な民族の交流が見られる。
「クレアは町に来るのはじめてなの?」
『うん!素敵な町ね…』
「それは、俺らの学園の理事長がここ一帯を守っているからさ。」
(イズミが…?)
「最初はとっても貧しい場所だったらしいぜ」
感心して話を聞いているとふと足を止めた。
「クレア?」
『あそこだ…』
なにかに導かれるように走り出した。
「えっ!?クレアっ!」
ふたりも慌てて追いかける。
クロエの視線の先には、長年の貫禄のあるひとつのお店。知る人ぞ知る。杖の名店だった。
ーカランカラン
お店の扉を開くと、決して広くはない内装。何処か懐かしい雰囲気を漂わせている。
「クレアっ!」
追いついたヨウテス達は、目を瞬かせる。
「このお店って…」
なにか言おうとするリオの言葉に被せて、しわがれた声が発せられた。
「これはこれは、ヨウテス坊ちゃんとリオ坊ちゃんではないですか。」
声の主は、この店の主であるアランである。
年齢は125歳。この街で最も長生きをしている長老だ。
「可愛らしいお嬢さんだね…」
クロエに目を向けたアランの表情はたちまち驚きの表情にかわる。
「あ、貴女様は…!」
『私のことをご存知なのですか?』
クロエは、食い入るようにアランを見つめる。
「…えぇ。勿論ですとも。
エミリアの姫君。」

