一方、クロエはひとり大きな鏡の前に立っていた。
等身大の鏡にはクロエの姿が映し出されている。
『もう逃げないよ...。』
初めて自分の姿を見たときクロエは逃げ出した。
彼女はきっと過去の記憶に問いかけていたのだろう。
眼帯を外して邪魔な髪をかき上げた。
オッドアイの瞳は美しく気高い。
ふと人の気配がして振り返るとルカがいた。
『ルカ...』
「俺はお前を見守っている…何時までも。」
らしくない言葉に吹き出しそうになるクロエ。
やけに真剣な表情にクロエは笑いそうな衝動を抑えた。
『ありがとう』
「...泣かないんだな。」
ルカは近くの壁に身を預けた。
優しい笑顔を浮かべている彼に不覚にもドキッと胸がなる。
『終わるまで泣かないって決めたから。』
「クスッ もし泣いたらそれなりの見返りを貰わなきゃな。」
クロエはいつもと違うルカの雰囲気に飲まれそうになったが正気を保った。
『いいよ、受けて立ってやる。』
無邪気に笑うクロエにルカも口元を緩ませた。
「意地でも泣かせたくなる。」
クロエの顎を持ち上げて急接近したルカに頬を赤くして距離をとった。
『ルカ、今日は変だね。』
「本来はこういう性格なんだよ。」
じれったくそう言うルカにクロエは顔を背けた。
ルカは何で時を操れたの...?
喉にでかかった言葉を飲み込んだ彼女はルカの前髪に手を伸ばした。
ルカは後ろに一歩下がると驚いたように目を開ける。
『ルカの目、片目しか見えないから。』
それだけ言うとクロエは眼帯を棚にしまうためその場を離れる。
「...」
ルカは静かにその後ろ姿を見ていた。

